松島博士によれば、温泉が発毛に影響を及ぼす理由として(1)守りの「温泉藻類」と(2)攻めの「温泉酵母」の2つの効果が挙げられるという。
まずは(1)「温泉藻類」について。
そもそも温泉の効能といえば、一般的にはリウマチや神経痛の治癒、美肌などが思い浮かぶ。ではなぜ温泉にそのような効果があるのだろうか。
従来、温泉研究のほとんどは温泉水や泥の性質を調査するもので、効果効能については全てを証明できていなかった。そこで温泉のなかの微生物である“藻”が効果の鍵なのではないかと考え研究を始めたのが、サラヴィオ中央研究所だ。
研究所のある大分・別府は、源泉数が約3000と世界一の温泉地として知られる。別府温泉には「炭酸水素塩泉」や「硫黄泉」など、医学的に治療効果があるとされる11種類の治療泉のうち、10種類が存在。研究所は、これらの源泉に存在する無数の微生物の検証を続け、高い抗炎症作用を持つ新種の藻類を発見した。
この藻が、昔からリウマチや腰痛、慢性皮膚炎などをいやしてきた正体の1つだった。研究所はこれを「温泉藻類RG92」(92番目に見つけた再生への道:Regeneration Gateway)と名付けた。
温泉藻類RG92はその抗炎症作用が特許成分として認められており、炎症によって引き起こされる「円形脱毛症」や「老人性脱毛症」の対策として効果を発揮する。炎症の誘発や悪化を抑えることで抜け毛を防ぐ、いわば「守り」の役割を果たすわけだ。
次に(2)「温泉酵母」について。
「男性型脱毛症(AGA)」や「女性型脱毛症」の主な原因は、ヘアサイクルの乱れにより毛髪の成長期が短くなることといわれている。髪の成長を促す鍵となるのが「ミトコンドリアの活性化」と「発毛シグナルの増加」。ミトコンドリアというのは、細胞が活動するのに必要なエネルギーを生産している。そのエネルギーは発毛・育毛にも必要で、ミトコンドリアが活発だと髪が元気になる仕組みだが、さまざまな要因でミトコンドリアは弱ってしまう。
そこで活躍するのが「温泉酵母エキス」だ。髪の成長の中心的な役割を担う毛乳頭細胞のミトコンドリアを活性化し、発毛・育毛のエネルギーを40%増加させる。また、「一次繊毛」という発毛シグナルを送受信するアンテナを60%伸ばす効果がある。一次繊毛を介して発信される発毛シグナルを300%に増やし、毛母細胞(髪のもととなる細胞)の分裂が活性化されることで、髪の成長期が長くなるという。また、皮膚のターンオーバーを正常化させることで、頭皮の環境も改善される。
つまり「温泉酵母エキス」には、発毛を促す毛乳頭細胞のミトコンドリアを活性化させ、細胞自体が元気になることで発毛に必要なエネルギーとシグナルを増やし、薄毛を改善する「攻め」の作用があるのだ。
松島博士によれば、この「守り」と「攻め」の効果によってさまざまな脱毛症を改善できるという。こうした研究成果は育毛剤などのヘアケア商品として世に出されている。
また、「温泉藻類RG92」は治療薬としての幅広い用途も検証されており、生活習慣病やアトピー性皮膚炎の改善、スポーツ分野における痛みの緩和や疲労の回復、遺伝子検査サービスを提供する企業と共同でのパーソナルヘアケア分析サービスなどの開発も進められている。
掲載URL http://healthcare.itmedia.co.jp/hc/articles/1701/19/news008.html