特に「中年」と呼ばれる男性にとって、薄毛の悩みは深刻である。育毛剤を使ったり、「毛が生える」と謳ったシャンプーを買ってみたり、すがる思いで対策をとっている人も少なくないだろう。しかし、朗報がある。別府の温泉を研究してきたサラヴィオ中央研究所が、発毛・育毛を可能にしたのだ。所長の加世田国与士博士は語る。
「私たちは『温泉に入るとなぜ体が楽になるのか?』という素朴な疑問から研究をスタートし、温泉に潜む新種の『藻』と『温泉酵母』の存在を突き止めました。その研究を進めるうち、偶然発毛との関係を発見したのです。温泉酵母からつくり出したオリジナルエキス(M-1育毛ミスト)を塗布すると、頭皮のミトコンドリアが活性化され、毛が生えます」
何ともびっくり仰天な話であるが、発毛・育毛のメカニズムについて、加世田氏に簡単に説明してもらおう。
「ミトコンドリアは、細胞内の構造物の一つ。細胞の中でエネルギーを生産しています。といっても、解明されていない謎も多く、毛根にある『毛乳頭細胞』内のミトコンドリアが関係する発毛調整機構を私たちは発見しました。休眠状態の毛根を起こし、毛を生やすシステムを確立したということです」
休眠状態とはどういうことか。そもそも毛には「ヘアサイクル」という成長過程がある。一度毛が生えてくると、毛が伸びる「成長期」(二~五年)、毛根が退化し、毛の成長が弱まる「退行期」(約二週間)、毛が抜け落ちて毛根の成長が止まる「休止期」(約3ヵ月)という三つの時期を経て、同じ毛根からまた新しい毛が生える「成長期」を迎える。この繰り返しは人類共通である。それなのに毛が薄くなるのは、毛の成長が休止期で止まってしまい、毛根が休眠状態になるからだ。
「休眠状態の毛根から毛を生やすためのカギは、大きく二つ。一つめは、先ほどお伝えしたミトコンドリアの活性化です。毛乳頭細胞はヘアサイクルの司令塔的存在なのですが、M-1を塗布すると、『発毛エネルギー』が四〇%増加しました。
もう一つは、『繊毛』という『発毛シグナル』を送受信する器官の伸長です。これも、培養細胞では私たちが世界で初めて可視化に成功し、解明した事実ですが、繊毛の伸びは毛の伸びと直結します。M-1を添加した繊毛は一・六倍に伸び、同時に、繊毛から発信されるシグナルも三〇〇%に増加しました」(加世田氏)
何やらすごい数字が目白押しだが、つまりは発毛に関するエネルギーもシグナルも強くなり、活動が活発になるということだ。これだけアプローチされれば、眠っている毛根も叩き起こされることだろう。
また、過剰な抜け毛を減らすことも薄毛対策の一つである。必要以上に毛が抜ければ、休止期の毛根が増え、やはり髪が薄くなるからだ。M-1は、この点でも優秀だという。
「悪玉ホルモンによって生成される『TGF-β』等の脱毛に関わるシグナルを最高七〇%減少させます。つまり、抜け毛の原因もできる限り取り除くことができるのです」(加世田氏)
とはいえ、すべての薄毛の悩みにこたえるものではないようだ。
加世田氏は次のように付け加える。
「そもそも髪の毛の本数(毛根の数)は生まれた時点で決まっており、およそ一〇万本。そのため、生まれつき髪の量が少ない人は難しいかもしれません。薄毛を放置したり、不適切な処置で毛根が死んでしまった人も同様です。しかし、ヘアサイクルの乱れが原因で新しい毛が生えてこない『男性型脱毛症(AGA)』や『女性型脱毛症』なら、期待してください」
その自信の源は、左上の写真だ。これは、ある男性が一定期間M-1を塗布した結果。見ると、明らかに髪がふさふさになっている。「ヘアサイクル」によって、結果が出るまでの期間には個人差があるというが、これは期待できそうだ。M-1は果たして薄毛に悩む人々の光明となるのか。
大高志帆=文